ようこそ井口淳子研究室へ(NEW)

民族音楽学、音楽学研究者。近刊は「送別の餃子:中国都市と農村肖像画」jiguchi@daion.ac.jp

声が小さな中国人

私が今、身を寄せているところ(単身赴任の家族の借家)は白老町という胆振郡(といっても関西人には??)の海辺の街ですが、なにせ暑い、湿度が高い。そして家には扇風機もクーラーもない、となると、首に保冷剤を巻きつけ、日中はどこぞのカフェにでも逃げ出したいくらいの日々が続きます。近くにカフェなどないけれど。

そこで、汗だくになった身体を洗うべく町民割引のある温泉へ向かうことになります。

そこは元々、町営温泉があった絶景の場所(ポロト湖畔)で、古くなった町営温泉がなくなり、その敷地に「星のや」が高級リゾート「界ポロト」を建て、罪滅ぼしかどうだかわかりませんが、町民は一回400円で界ポロトのマルの湯に入湯できるという仕組みなのです(町民でなくとも1500円で入浴できます)。

界ポロトといえば、一泊が数万円の高級リゾートなので、泊まることは到底かないませんが、天井に丸い大きな穴が開けられたギリシャ風の浴場でモール温泉のお湯を楽しむことができます。

先週、いつものように人気のない女湯を独占し、着替えていたら、ホテルのウェアを着た上品な母娘が入ってこられ、小さな声で話しています。耳をそばだてると、なんと俳優のような美しい北京語!

思わず「从哪儿来的?どちらから?」と尋ねると「北京から」、そこから私が93年に北京に住んでいたことや母娘のご自宅がその時の住居に近いことなど、楽しく会話しました。

この母娘も、外見からは外国人とは思えないので、おそらく私たちが気づいていないだけで中国の富裕層はかなりディープでリッチな日本旅行を楽しんでいるのではないでしょうか。

久々に美しい北京語の発音に接し、この日は終日シアワセな気分が続きました。

きっと母娘も土産話に温泉で出会った日本人のことを話しているような気がします。どんな贅沢なホテルや食事よりも現地の人とのふれあいが記憶に残りますから。

 

ポロト界 まるの湯

hoshinoresorts.com